Rock solid flight by SWING
スイングの目標は、パラグライダーを日々向上させることです。30年以上の経験と業界のパイオニアとして、私たちはひとつのことに辿りつきました。最高のパラグライダーとは、パイロットが望む通りに正確に動かなくてはならないということ … そのために、あらゆる状況下で最大限にコントロール性が損なわれない … そのためにRASTが生まれました。
Ram Air Section Technology (RAST) は、フライヤーにとっての決定的に安全性を高めることに貢献する、スイング独自の安全技術です。RASTは、キャノピーを異なる圧力ゾーンに翼の前後で分割することで、パラグライダー内部の圧力をよりコントロールする技術設計要素です。グライダーの挙動はより安定し、コントロールしやすくなり、特に乱気流の多い状況下でその効果を発揮します。
RASTが個々のパイロットにもたらす効果は様々です。経験豊富なパイロットは、RASTを使用することで、難しいコンディションでもグライダーの性能を最大限に引き出すことができます。特に初心者やスクールでは、テイクオフ時のRASTによるサポートされ失敗が少なくなることが評価されています。
RASTを搭載したパラグライダーでは、キャノピーは内部で1つまたは複数のファブリックパネルによって異なる(圧力)セクションに分かれており、そのうちのいくつかは飛行方向に対して横方向にバルブを備えています。これにより、キャノピー内の気流を制御することが可能になります。その作用は、例えばタンク内のコンパートメント壁に例えることができます。
RASTとは何ですか?
RASTにより、パラグライダーのキャノピー内部の空気平衡化の流れは、規定の開口部を通して調整することができます。これは、膨らませる(離陸)時と空気を抜く時の両方に適用されます。例えば潰れによる圧力損失の場合、コアセクション(翼後方側)の相対的な内部圧力は上昇しますが、バッファーセクション(翼前方側)が変形することで導入されたエネルギーを吸収します。
さらに、RASTは前縁および後縁の追加のテンションレベルとして使用でき、飛行の快適性にプラスの効果をもたらします。RASTはプロファイルの高さ全体にわたってリブを接続するため、構造に補強効果をもたらし、補強材や補強要素を節約、あるいはこの特殊な構造方法によって完全に置き換えることさえ可能です。(RASTの重量は機体全体で約30gですが、その重量の増加以上に翼内部の構造体を減らすことができ、全体としては軽量化につながっています。)
離陸時
…とてもバランスのとれた立ち上げ動作!
テイクオフ時にAラインを最初に引くと、プロファイルの前方部分(バッファー部分)が素早く膨らみ、(後方までエアーが充填しきる前に)グライダーは地面からすぐに立ち上がり、その後後方が膨らんでいく段階に入ります。一方、RASTシステム(コアセクション)の後方部分は、コントロールされながら空気が充填され、(段階ごとに最適な翼断面型となりながら)とても調和のとれた膨張特性を実現します。特にテイクオフが難しいコンディション(逆風や強風など)では、パイロットがこの特性の恩恵を受けることができます。特に初心者向けのグライダーでは、スイングはRASTの位置と最適化をテイクオフ特性に合わせて調整し、スクール生が早く上達できるようにしています。
フライト中
…快適でコンパクトな飛行感覚!
パラグライダーのキャノピー内部では、バッファーセクションとコアコアセクションの間にバランスのとれた圧力状態が保たれています。この飛行段階では、RASTは翼の補強として機能し、パラグライダーに剛性と安定性を与えます。これは、快適でカチッとした飛行感覚となってはっきりと感じられ、空中へ飛び出したその瞬間から翼に対する信頼感を生み出します。
潰れた時
…厳しいコンディションでも最大限のコントロールが可能!
乱気流による翼の潰れは、パイロットとしては常に避けたいものですが、余分なエネルギーを吸収するためには絶対に必要なものです。
RASTは、そのような状況下でもグライダーをより確実にコントロールできるようにサポートします。バッファーセクション(翼前方側の緩衝部分)が小さな潰れと圧力低下により乱気流によるエネルギーを吸収する一方で、RASTはキャノピー後部の空気が前方に流れるのを防ぎます。コアセクション(翼後方)の内部圧力がパンパンに保たれるため、キャノピーの変形の拡大を抑制します。翼型とブレークプレッシャーが維持されることで、パイロットは自信を持ってこのような困難な状況を乗り切ることができます。
アルカスRSライトの翼前縁の潰れ
ランディングアプローチ中の非対称な潰れduring landing approach
アルカス RSの翼前縁の潰れ
離陸直後の大きな翼前縁の潰れ
Ram Air = 動圧(翼を膨らませる圧力・ラム圧)
Section = 区分け / 仕切り、壁
Technology = 技術
2014年、スイングはRASTを使用して製造された最初のシリーズ・パラグライダーであるMITO(ミト)を発表しました。
最初のRASTパラグライダーがスクール用パラグライダーであったのは偶然ではありません。バルクヘッド(翼内部を仕切る壁)を設置するというアイデアは、もともとスクールレベルにおいての安全性を高めるためのテイクオフテクニックの解決策として生まれたものだからです。
RASTにより、パラグライダーの前方部分は立ち上げ動作に入るとすぐに膨らみ、後方部分はコントロールされながら空気を充填します。これにより、離陸段階でグライダーの中央部分まで大きく潰れることを効果的に防止することができ、この明らかに安全な離陸特性により、MITOは「インストラクターのお気に入り」となりました。
RASTにはさらに多くの可能性があることにすぐに気づき、そのコンセプトの特許申請を行うことを決定しました。
RASTは2019年より特許として認められ、登録されています。現在、スイングの全製品ラインナップにこのバルクヘッドシステムが搭載されています。
以下に挙げる利点は、モデルや要件、およびその結果得られるRASTのバリエーションによって、程度の差こそあれ、はっきりしています。
いいえ。バーやチューブを使用してパラグライダーをより安定させる(硬くする)という以前の試みとの違いは、RASTを搭載したパラグライダーは、仕切り壁の前方部分が潰れることができる、また、そうすべきであるという点です。この部分は、エネルギーを吸収する車のクラッシャブルゾーンに例えることができます。
しかし、パーティションのサイズと位置は、キャノピーの変形に影響を与える可能性があります。したがって、RASTは、小さくて影響の小さい潰れまで抑えるものではありませんが、後縁まで潰れを伴う大きな翼が崩壊するほどの潰れてしまう傾向を効果的に抑制します。
もちろん、アクティブなパイロットであるスイングの開発チームも、この点についても答えを知りたいと思いました。そのため、開発中のシミュレーションやグライダーの品質評価では、まさにこの点をテストしています。
RASTの効果により、大規模で明らかに危険なキャノピーの変形(潰れ)が起こる可能性は低くなります。それとは別に、RASTパラグライダーの挙動は、RASTのないパラグライダーと比べて顕著に異なるということはありません。したがって、キャノピーが大幅に崩壊した場合、パイロットは、そのクラスに相応な飛行特性を持つ、十分にテストされたグライダーでフライトしていると意識する必要はあります。ただ、安全性の面では(同クラスの機体と比較して)明らかにアドバンテージをもっています。
しかし、スイングにとって、実際の状況下での長年のフライト経験は、シミュレーションよりもはるかに意味があります。2014年からRASTを搭載したパラグライダーを製造し、テストしてきましたが、このシステムが実際のフライトを通して、その効果を証明していることは間違いありません。
残念ながら、そう単純な話ではありません。パラグライダーの耐潰れ性は、認証試験におけるそのグライダーの評価には何ら影響を与えません。EN試験では、RASTを装備したグライダーで実施される耐潰れ試験は、他のパラグライダーと同じ面積で行われなければならず、同じサイズの耐潰れが発生した場合、従来のグライダーと全く同じ挙動を示します。
とはいえ、スイングのRASTを搭載したグライダーでは、EN/LTF規格で規定された測定範囲内で、その方法でキャノピーを潰すこと自体が、ある程度不可能になっています。
したがって、グライダーを「ピッチ」させたり、補助ラインを組み込んだりして、必要な測定領域を満たすのに十分な大きさのコンバートを作り出す必要があります。しかし、このようなトリックや策略によってグライダーが事前に加速されていることが多いため、このことが逆にテスト結果に悪影響を及ぼす可能性があります。
RASTは主に潰れを防ぐことを目的としており、大きな潰れに対する反応を改善することを目的としていないことを踏まえ、現在の試験手順について、最新技術を搭載した機体へ100%適応した安全性の尺度となっているのか … 型式試験機関とのさらなる議論が必要である。
いいえ。ただし、RASTを最大限に活用するために、テイクオフと飛行テクニックをシステムに多少適応させるとよりよくなります。
向かい風の弱い状況でテイクオフする場合、RAST搭載グライダーは完全に充填されるまでに若干の時間を要することがあります。ただし、グライダーが頭上まで立ち上がり、その頭上安定を確認するくらい少し余裕を持たせてから、助走を行ってください。(実際はさほど意識しなくとも、助走に移って構いません。RASTを感じることなく翼全体への空気の重点はスムースに行われます。)頭上安定を行うことで、短いテイクオフスペースでも問題なく離陸できます。
空中では、乱気流の中でグライダーを安定させるために、ブレーキラインを短時間に少しだけ瞬間的に引くことで、グライダーをより良くコントロールできます。この場合、ブレーキ圧は短時間だけ高くなります。
いいえ。要求事項や特定の特性に焦点を当てることによって、最高の飛行体験を提供するために、異なるバージョンのRASTを使用しています。例えば、スクール用グライダーでは、テイクオフ時の挙動に重点が置かれますが、高性能グライダーではテイクオフ時の挙動は最優先事項ではありません。高性能グライダーでは、フルアクセルでのフライト時のキャノピーの安定性と、キャノピーの大きな潰れを可能な限り防止することに重点が置かれています。
実際、はるかに効果的です! 潰れの初期段階でアクティブブレーキを使用すると、空気を後部から前部に押し出すのではなく、後縁を下方向に引っ張ってプロファイルを変化させ、負の流れで下面に揚力が(この場合は実際にはダウンフォースが)蓄積されないようにするからです。 ブレーキング時には、前縁と後縁の間に空気クッションが形成され、これにより翼形下面の湾曲が直線化され、ダウンフォースの発生が防止されます。
RASTでは、下面の湾曲を直線化するために必要な操縦舵面量が大幅に少なくて済みます。さらに、急激なブレーキング時には、上面の迎え角が負の値であっても、翼形が変化し、揚力が依然として発生します。
まず、SIVコースはRASTの有効性を証明するものでも、また否定するものでもないということを理解してください。
RASTは、実際の飛行条件下でパイロットをサポートする予防システムです。とりわけ、大きなキャノピーの潰れの発生確率を大幅に低減します。
しかし、セーフティートレーニングでは、パイロットがその結果生じる動力学的特性に慣れ、それに対して正しく反応できるようになるために、クラッシュ時のシミュレーションが行われます。このトレーニング目標を達成するためには、パイロットは隔壁を乗り越えるほど十分に大きなクラッシュを引き起こさなければなりません。この場合、RASTの効果は、一般的により早い翼の戻りとより少ない高度ロスを除いて、みられません。これは、車の衝突実験の前にABSをオフにして、ABSのない車との結果を比較するようなものです。
RAST搭載のグライダーでは、非対称の潰しはほとんどのパイロットにとってシミュレーションが容易ではありません(認証に関する質問を参照)。開始の力は通常かなり強く、より強くライザーを引き込まなくてはならず、その判断はより困難です。さらに、潰すときの力が強いため、外側のAライザーが手からすり抜けてしまい、外側の翼が適切に分離しない危険性を高めます。これに対する反応は高いダイナミクスを引き起こし、クラバットさえ引き起こす可能性があります。しかし、これはシミュレーション方法の誤りで、飛行中の「現実の」潰しとはまったく共通点がありません。
同様に、RASTのないパラグライダーも、これらのシミュレーションの誤りを引き起こし、非常にダイナミックな反応を意図せず引き起こす可能性があります。RASTの目的は、フライトを楽しむのを助けることであり、セーフティートレーニングにおける操縦のシミュレーションを気楽におこなえるようにすることではありません。
ある程度現実的な墜落をシミュレートするには、やりやすい方向でブレーキを握り、ライザーを外側に引っ張ってしっかりとグリップを確保してはいけません。また、正面からの完全な墜落をシミュレートするには、より強い力を出せるように備える必要があります。その他のセーフティトレーニングにおける操縦は、通常通り行うことができます。
安全性の面に加えて、RASTのキャノピー補強効果と3番目のテンションレベルが重要な論拠となります。
後部領域の圧力が高いため、性能を低下させるキャノピーの動きが減少し、トップセールのロッドなどの補強要素を完全に、あるいは部分的に取り除くことができます。
さらに、特に我々の最新の開発では、リーディングエッジ、トレーリングエッジ、RASTの間の張力のバランスをうまく調整することに成功し、乱気流でのピッチングに関してグライダーが極めてニュートラルな挙動を示すようになりました。これにより、パイロットは正確でダイレクトなハンドリングを維持しながら、非常に快適なフライト体験を得ることができます。ほとんどのパイロットにとって、空中で快適に感じられるときこそ、フライト体験を本当に楽しむことができ、グライダーから最大限のパフォーマンスを引き出すことができるときなのです。
すでに述べたように、RASTは、お客様に最高の製品を提供するために、さまざまなパラメータを再構成する機会を与える追加の設計機能です。
まず第一に、RASTは特許取得済みであるため、誰もが簡単にこの技術を利用できるわけではありません。しかし、将来、適切な機会が訪れた場合には、他のパラグライダーメーカーと協力してRASTをさらに開発していくつもりです。さらに、技術革新が全モデルに影響を及ぼす可能性があり、開発および生産コストがかかる場合には、リスク管理の観点から十分に検討した上で決定する必要があります。
もう一つの問題は、RASTの利点がシミュレーション操作によってフライトテストを行えないということです。なぜなら、テストパイロットによって翼が潰された状態では、RASTの安全・予防システムがすでに動作しない状態にされているからです。
RASTの潜在能力を最大限に引き出すには、ただ一つの方法しかありません。それは、飛ぶ、飛ぶ、飛ぶ!さらに、実際の状況下で飛ぶことだけです。
RASTをどう評価するかはそれぞれの方の自由ですが、スイングでは、これを使わない理由は何もありません。このシステムは2014年から実地でその性能を証明しており、「危険な副作用」は一切見られていません。
50%以下の小さな潰れではグライダーが真っ直ぐに飛び影響がなく、私にとってRASTは、あらゆるサーマルコンディションでグライダーを常にコントロールでき、快適に飛べることを意味しています。
フライト中、Bプランまで常に考え続けなくてはならない。RASTのおかげで、長時間のクロスカントリーフライトでも冷静さを保ち、プランの修正に集中し続けることができる。
Matthias Wehrle、ドイツ
「完璧なパイロットなどいない」し、フライト中に何が起こるかを常に正確に予測できるパイロットもいない。
最近、谷を越えた後、風上側に向かったつもりだったのに、突然、ダウンドラフト、強烈な風下側のサーマル、強風という悪条件が重なった場所に自分がいることに気づいたことがあった。
RAST搭載の二オスRSが私の操縦コマンドに従い続け、キャノピーが乱気流にどれほど長く耐えたか、そして避けられないことが起こり、突然完全に翼が崩壊するまで、本当に驚くべきことでした。それは一瞬の出来事でした。数メートルの高度を失い、グライダーは再び私の頭上で完全に膨らんだように見え、まるで何もなかったかのようでした。私は、RASTはまさにこのような状況のために作られたと確信しています。
RASTを持っている人は、それほど運に頼る必要がありません。安全に飛ぶことができます ;-)
Didi Siglbauer、ドイツ
「荒れたサーマルの中を100時間以上飛び続け、RASTシステムのメリットに完全に納得しました。アクセルを踏みながらのフライト中でも、グライダーが前方に飛び出したり、キャノピーが回転したりすることなく、穏やかな小さな潰れに留まります。
RASTは、いわば「(車の)エアバッグ」と一緒に飛んでいるようなものです。
トルステン・ハーネ(ドイツ)
なぜそうしないのか?
YouTube動画:Q&Aに関するRAST
素晴らしいアイデアだと思う。選択しない理由はないと思います。私は1992年からパラグライダーをしているが、これは今までにない最も大きな安全性の向上につながっていると思う。RAST搭載していないパラグライダーをお持ちの方は明日にもパラグライダーを変えるべきでしょう!私も同様に、このRASTシステムを搭載したものに変えるだろう。私のように、多くの人もそうするだろう。理解できない変えない理由はどこにもありません。
ホセ・マヌエル・カルボネル・カレラ
私はスイングの広告を通じてRASTを知りました。このアイデアに感激し、安全性の面で大きな飛躍だと考えています。私は主にグライダーやモータープレーン、硬い翼を使った曲技飛行も行っています。風が吹くたびに、小さな斜面に行ってソアリングをおこなっています。
その感覚は、やはり言葉では言い表せません。パラグライダーでは、翼が柔らかくなったり、潰れたりしないか、いつも心配していました。RASTによって、ついに解決策が見つかりました!この開発に尽力したスイングR&Dチームに心から感謝します。
Westerwaldより、よろしくお伝えください。
Thorsten Gudelius、ドイツ
私は7月に数日間、二オスRS XSをテストすることができました。 控えめに言っても、スポーティーなコンディションでした。 強いサーマルと北風が混在していました。 私は一度もクラッシュを経験しませんでした。
ルシアン・ハースのブログが指摘しているように、RASTシステムを最大限に活用するには、その正しい使い方を学ぶべきです。
リンク
サビーネ・シェヒテレ